大峯山(八経ヶ岳)
山行概要
山行日程
2022年8月20日(土曜日)〜21日(日曜日)
天気
山行中の天気
20日 曇 後 霧、21日 雨 後 曇
アメダス(奈良県五條)
アメダス(奈良県天川)
アクセス
往路:近鉄吉野線下市口駅から奈良交通バスで天川川合バス停下車
復路:天川川合バス停から奈良交通バスで下市口駅へ。下市口駅から近鉄吉野線
コース
コース詳細
20日(1日目):天川川合BS→天川吊橋→弥山登山口→(川合道)→栃尾辻→天女の頂→ナベの耳→高崎横手出合→日裏山→弥山辻→明星ヶ岳→弥山辻→八経ヶ岳→弥山小屋→弥山→弥山小屋(泊)
21日:弥山小屋→狼平避難小屋→高崎横手出合→ナベの耳→フトンド横手→栃尾辻→弥山登山口→天川吊橋→天川川合BS
コースタイム
1日目:ヤマレコ8:01、山と高原地図7:07、実測4:54(※休憩込み ct比:ヤマレコ0.607、山と高原地図0.689)
2日目:ヤマレコ5:04、山と高原地図4:05、実測2:52(※休憩込み ct比:ヤマレコ0.564、山と高原地図0.702)
GPS記録
ヤマレコ
YAMAP
山行記録
天川村へ
吉野口駅→下市口駅
JR和歌山線で吉野口駅へ。ここで近鉄吉野線に乗り換えます。吉野口駅は名前こそ吉野がつきますが、所在は吉野よりかなり北の御所市内。また近鉄吉野線橿原神宮前・大阪阿部野橋駅方面行きとJR和歌山線五条・和歌山方面行きが同じホームで改札を通らず乗り換えられる珍しい駅構造になっており、写真のような乗り換え用ICカード読み取り機や乗換若しくは下車にあたっての注意書きが設置されています。吉野口駅からは急行(実質各駅停車)で4駅吉野寄りの下市口駅へ。ここが黒滝村や天川村へのアクセスの拠点となっており、駅前から天川村へ向かうバスが発車します。
奈良交通バス(下市口駅→天川川合)
下市口駅から登山口へ向かうバスは洞川温泉行きの急行バス。下市口駅を出ると黒滝案内センター(道の駅吉野路黒滝)、天川川合と停車します。8:20発のバスには吉野行き急行から乗り換えた10数名の他に3人ほどが乗車しました。このバスには大阪阿部野橋○:○発の特急さくらライナーでも間に合います(下市口駅が8:12着)。自分が乗った時には乗車時のICカード読み取り機がエラーを起こす(乗客全員のICカードがエラーになった)というトラブルがありましたが、下車時にICカードで個別精算できてなんとかなりました。
天川村総合案内所
下市口駅から約40分、天川川合バス停に到着です。バス停に隣接して天川村総合案内所があり、トイレもキレイなのでゆっくり立ち寄ってからのスタートとしました。
天川村総合案内所では洞川温泉や天の川温泉、大峯山ハイキングなどの情報が様々手に入ります。中にはトレッキングマップもあり、参考にもらっていきました。ちょうど前の週に10日ぶりに救助された遭難者2人がいたこともあって、登山届を提出したかどうかの確認が念入りに行われていました。
奈良県最高峰・八経ヶ岳へ
川合道で栃尾辻へ
いよいよ山行スタートです。まずは天川川合バス停を出て、坂を下りると川合交差点へ。左手が洞川温泉方面、右手が天の川温泉方面で、右手に進みます。少し進むと少し古びた木に「ミタライ渓谷遊歩道」「弥山登山口」と書かれた看板が見えるので、そこを左折します。すると、正面に見えるのは天ノ川にかかる川合吊橋。一度に渡るのは5人までと制約があり、結構揺れます。吊橋を渡ってすぐ、ミタライ渓谷遊歩道を左に分け、弥山・八経ヶ岳方面は天川村役場を右手に見ながら正面の山へ。取付きでは民家の裏手に回っていきます。
ここから川合道が始まります。序盤は急登で、門前山の手前くらいまで樹林帯の中をひたすら高度を上げていきます。途中、送電線と交差するあたりで洞川温泉方面の眺望が開けます。天川村周辺は林業の盛んな地域でもあり、最初の樹林帯は杉林の中を歩きます。雰囲気としては奥多摩山域の登り始めの区間に似ています。
門前山のピークはおそらく登山道の脇の斜面の上で、登山道自体はその肩を通過します。しばらく緩やかな斜面を登ると、カーブミラーと看板が見え、未舗装の広い林道に出ます。これが坪ノ内林道です。林道沿いに少し進んだところで、「弥山 川合」と書かれた白い看板とコンクリート法面の上をたどっていく細い道への分岐にあたります。ここからは西方向に連なる高野山周辺の山並みの眺望が良いです。そして、この細い道を登っていくと栃尾辻に到着します。栃尾辻避難小屋はヤマレコでは荒廃と記載されていますが、屋根と壁のみがある簡素な作りで、緊急避難的に雨宿りする分には使えるのではないかと思います。
天女の頂から高崎横手出合
栃尾辻からまたすぐに急登(オオビヌキ坂)が始まります。少し進んだ先で、黄色い道標が見える右手に進む道と正面に進む踏み跡が分かれるポイントがあります。ここが天女の頂分岐で、今回は正面に進みました。踏み跡が薄い区間もあるので、GPSも使いながら慎重に進みます。分岐から急登を上がると視界が開けた笹原に出ます。ここが天女の舞で、その少し先に天女の頂があります。ピークを越えて高度を下げ、元の川合道と合流すると、金引橋から登ってくるカナビキ尾根と合流し、ナメリ坂を登って木の根が目立つ細いトラバースを進むとナベの耳へ。(特に場所を明示するものはありませんでした)ナベの耳からは頂仙岳の西をトラバース(高崎横手)して高崎横手出合に到着します。
頂仙岳・明星ヶ岳登山道
高崎横手出合では狼平避難小屋を経て弥山小屋へ直接向かうルートと日裏山を経て明星ヶ岳へ向かうルートが分岐します。今回は八経ヶ岳を先に通った上で弥山小屋に向かうため、「頂仙岳・明星ヶ岳登山道」ことレンゲ道で明星ヶ岳を目指しました。
分岐からすぐのところで、大きな影が前を横切り、ハッとしてその行った先を見ると、大きな雌の鹿が2頭こちらを見ていました。栃尾辻から上では植林から原生林に植生が変わったこともあり、野生動物にこうして会えたのも良かったなというところですが、この鹿による食害も大きいようで共生にあたっては問題も多数。さて、登山道の方は高崎横手出合の先でトップリ尾尾根との分岐を通過して、日裏山に至ります。この辺りは樹林帯と笹原が交互に現れるような景観です。しばらく尾根伝いに登っていくと、ピンクテープに「狼平・八経ヶ岳中間点 重要ポイント」という文字があります。その後も概ねの距離がメモされたピンクテープが登場します。さらに高度を上げて行った先で、左手に鹿避けの柵が見えたら大峯奥駈道との合流点・弥山辻です。
明星ヶ岳へは、弥山辻から八経ヶ岳と逆方向に少し進み、右手に黄色い道標とピンクテープが見える地点の左手の踏み跡を詰めていきます。頂上は本来見晴らしの良い場所のようですが、この日は生憎の霧と強風でした。山頂には明星ヶ岳の山名標の他、どこかの山岳団体が立てた「Mt.Venus」の山名標も。
近畿最高峰・八経ヶ岳と聖地・弥山
弥山辻に戻り、今度は八経ヶ岳を目指して大峯奥駈道を北に向かってたどります。トウヒなどの林の間を抜ける稜線を辿ると、露岩の目立つピークにたどり着きます。奈良県最高峰にして近畿最高峰の八経ヶ岳です。名前の由来は、役行者(えんのぎょうじゃ)が法華経八巻を埋めたという修験道の霊地であることから発した名で鉢経とも充てるそうです。またの名を八剣山、仏教ヶ岳ともいいます。ここには二等三角点・弥仙山があります。八経ヶ岳の山名標は、看板形式の質素な感じで、日本百名山と近畿最高峰である旨が明記されています。
八経ヶ岳からは露岩の急坂を下り少し進むと、途中鹿除けの柵をくぐって国の天然記念物であるオオヤマレンゲの自生地に入ります。例年7月初旬頃には純白の花が見られるそうで、その時期にも再訪したいところ。古今宿の鞍部を越えて、トウヒやシラビソの林の中を登り返した先にマンザード屋根の建物が見えてきます。これが弥山小屋で、弥山山頂へは狼平寄りの鳥居の先の分岐から登ります。弥山山頂には山名標はなく、天川弁財天社の奥宮が鎮座しています。弥山は水の神として古くから聖地とされてきた大峯の中心的山岳で、仏教の世界観を表した須弥山から名付けられたそうです。
弥山小屋で明かす夜
弥山小屋の概要
弥山のすぐ脇にあり、4月下旬から11月中旬には管理人が常駐する山小屋です。個室や写真ギャラリーがあるそうですが、個室は2階にあるのか宿泊したフロアは2段ベッドのある大部屋のみでした。テント泊も可能で、宿泊者は小屋泊・テント泊それぞれで記帳します。テント泊は500円、小屋泊は1泊2食で8,500円です。アルプスや八ヶ岳の小屋と異なり、軽食営業はなく、カップ麺やお菓子の購入はできる仕様。水についても有料ではありますが、購入できます。夕食は17時から、朝食は朝6時からで、準備ができると管理人が部屋まで声がけに来てくれます。トイレは別棟で非常に清潔感のある感じでした。また、乾燥室は入口から入ってすぐのところにあります。携帯電波(docomo)ですが、食堂では4Gが1本(時折2本)立ちますが、大部屋では電波が入りません。
弥山小屋の食事
小屋でのルート再考
夕方までは曇や霧でもっていた天気も、夜遅くから崩れ始め、外の雨音が響くようになりました。夕食の時間にヤマテンの予報(八経ヶ岳)やウェザーニュースの雨量レーダーを確認していたのですが、予測にブレがある模様。当初計画では山上ヶ岳まで大峯奥駈道を縦走して洞川温泉へ下山する予定でしたが、もともと検討しておいたエスケープについても考え始めました。小屋の管理人さんの情報で天の川温泉へ直接下りる坪内ルートは登山道崩落のため通行止め、検討していたエスケープのうち国道169号側へ抜けるルートは下山後のバスが夕方までないため却下ということで、朝の雨の状況で天川川合BSへ下山するか、山上ヶ岳まで縦走を開始するか判断することにしました。
雨のエスケープ・天川川合BSへ
雨は本降りに
未明の雨音で一度目が覚めましたが、もう一度寝直し4時頃から布団の中でゴロゴロ。5時半に洗顔や着替えで起床しましたが、昨日の予報よりも雨が強い様子。朝食時に雨量予測を見ると、8時半から9時頃には止むものの、13時以降強い雨域がかかり、さらには夕方に猛烈な雨の予測もあり、この時点で天川川合への下山を決めて準備にかかりました。朝食後、雨天装備を整え、雨が少し弱くなったタイミングでスタート。この土日に弥山小屋に宿泊したのは自分含め小屋泊3名とテント泊1名で全員ソロ。小屋泊のうち、カナビキ尾根から来られた方はバイクでいらっしゃったとのことで、またカナビキ尾根を下るそうで、その前に八経ヶ岳へのピストンに向かわれました。他の自分含む3名は天川川合への下山ですが、それぞれスタートは別タイミング。お互いご安全に、と声がけして下山開始です。
弥山小屋から狼平経由で高崎横手出合
狼平避難小屋を経由して高崎横手出合までは初めて通るルート。トウヒやシラビソの林の中、露岩やガレの目立つ登山道を大黒岩を巻いて狼平へ高度を下げていきます。途中から本降りの雨になる中、登山道も沢のようになりました。鹿除けの柵を越えると木製階段がこれでもかと長く続きます。雨なので足を滑らさないように慎重に足を運びます。階段を下り切る寸前のところに三角屋根が見えてきました。そこが狼平避難小屋で、八剣谷と池ノ谷が合流した弥山川がすぐ脇を流れ、高崎横手出合へは弥山川を吊橋で渡ります。なお、双門滝へのルートの分岐は弥山川の左岸側にあります。吊橋の先少し登り返した後、林の中の道を進むと昨日レンゲ道へと入っていった高崎横手出合に到着です。
雨の川合道
雨はおさまる気配がなかなかなく、また傾斜があるところでは沢のようになっているだけでなく、平坦なところでは避けようがない水溜まりが出来ており、もう靴の中まで浸水するのは避けられないと判断して進むことに。下山後の着替えをしっかり防水して持ってきていることが後押しになりました。高崎横手出合から先はフトンド横手を除いて昨日歩いたルートのため、なるべく急いで下山するように集中力を高めます。ナベの耳を通過し、カナビキ尾根を右手に分け、天女の頂への踏み跡を横目にフトンド横手へ。天女の頂の南西斜面をトラバースするルートで道幅が狭く崖側が切り立っているため、足下に気をつけながら歩みを進めます。天女の頂への分岐にたどり着くと尾根が広くなりひと安心。ここからオオビヌキ坂を駆け下ると栃尾辻です。
栃尾辻まで来れば、後は登り返しはほとんどなく下る一方。高度が下がったためか強い雨域が過ぎたからか、気持ち雨が弱くなったように感じました。坪ノ内林道と接しては離れて再度合流した後、門前山への道に入り川合集落の登山口へ。急ぎながらも足下の露岩に足を取られないよう注意しながら駆け下ります。門前山の先、送電線と交差する開けた場所からは北側に広がる山並みが霧と合わさって水墨画のような風景を見せていました。
天川川合バス停到着
弥山登山口に出るとホッとひと息。この雨なので登ってくるハイカーとは全くすれ違いませんでしたが、天川吊橋のたもとではミタライ渓谷へ向かう方とすれ違いました。吊橋を渡るとすぐに天川川合バス停に到着。隣接する天川村総合案内所の外ベンチをお借りして荷物整理をさせていただき、許可をいただいて公衆トイレの個室で着替えをさせていただきました。また、この日は特別なのかもしれませんが、下りてきたハイカーにお茶やコーヒーを出していただけました。片付けが済んでコーヒーを飲むときには、雨が止み晴れ間が見える状況で、霧がかかった大峯の山々を眺めながらバス待ちの間のひとときで山行の振り返っていました。
帰路につく
天川川合バス停でのバス待ちが1時間半ほどあったので、弥山小屋で一緒だった方も追い付いてこられました。そして下市口駅からのバスも到着。ミタライ渓谷へ向かうパーティが2組10人弱いらっしゃいました。ようやくバスの到着時間となりバス停へ移動。復路に乗車した天川川合10:39発のバスは急行ではないため、途中のルートも急行バスと異なり、下市口駅までの所要時間も56分と長くなっています。下市口駅からは近鉄吉野線・南大阪線の特急さくらライナーで大阪阿部野橋駅へ。今は土休日の日中、吉野発大阪阿部野橋行き急行が運転されていないため、大阪方面へ急ぐには特急に乗る必要が生じてしまいました。
まとめ
今回は奈良県最高峰にして近畿最高峰の八経ヶ岳への弥山小屋泊のんびり登山で、大峯奥駈道への第一歩を踏み出しました。一般には大峯山というと日本三百名山の山上ヶ岳(今も女人禁制)のことを指すそうで、日本百名山の大峯山も八経ヶ岳だけではなく山上ヶ岳や大峯奥駈道を含めた山域のことを指すと言われています。今回歩けなかった大峯奥駈道や山上ヶ岳、女人大峯と呼ばれる稲村ヶ岳など、洞川温泉と合わせてまた訪ねたいですね。